新ジャンル 01
組香
くみこう
においを「聞いて」あてる、日本の古い遊び。源氏香は答えが52の図になる。
香道(こうどう)は、いい香りのする木(香木)を静かに味わう、日本の芸道です。その中の「組香(くみこう)」は、いくつかの香りを聞いて、同じか違うかなどを当てる遊びです。このゲームの「源氏香(げんじこう)」では、5つの香りを聞き、同じ香りだと思う線を横線でつないで図を作り、その図に付いた『源氏物語』の巻名で答えます。
遊べるゲーム:源氏香 香りの聞きわけ メンバー限定
遊びのタイプ:聞きわけパズル
5つの香炉の音とけむりで香りを「聞き」、同じものをつないで源氏香の図を作る。正解すると52の図と源氏物語の巻名が香図帖に集まる、香道の遊び。
くわしい解説を読む(組香ってなに?・歴史・本物のやり方・豆知識)
組香ってなに?
香道では、香木(こうぼく)という香りのする木を、小さく薄く切って使います。灰と炭団(たどん)を入れた香炉(こうろ)を用意し、灰の上に「銀葉(ぎんよう)」という雲母(うんも)の薄い板をのせ、そこに香木をおいて、じんわり温めて香りを立てます。線香のように燃やすのではなく、温めて香りを出すしくみです。
この香りを、日本では「嗅ぐ」とは言わず、「聞く」と言います。「聞く」には「理解する」という意味もあり、においをかぐというより、香りに耳をかたむけて、心の中で対話するように向き合う、という考え方です。香木を生きものと考え、魂が宿ると見る説明もあります。
組香は、何種類かの香りを決まりにしたがって聞き、香りが同じか違うかなどを当てる遊びです。和歌や物語などのお題がつき、季節や景色を思いうかべながら楽しみます。勝ち負けよりも、静けさの中で香りを味わうことが大切だとされています。伝わっている組香は約千種、多いと数える説明では二千をこえるともいわれます。
はじまりと歴史(由来)
『日本書紀』には、推古天皇の3年(595年)の夏、淡路島に流れ着いた香木(沈香)が朝廷に献上された、と書かれているといわれます。日本の香りの文化は仏教といっしょに入ってきて、香木がたかれるようになりました。はじめは宗教の儀式で使われました。
平安時代になると、宗教の儀式からはなれて、香りを聞いて楽しむようになりました。貴族は、いろいろな香料をねり合わせて自分だけの香りを作り(薫物・たきもの)、その香りを比べる「薫物合わせ」などの遊びも行われました。
室町時代に、香木の香りを聞きわける香道が、ひとつの芸道としてまとまりました。御家流(おいえりゅう)の祖とされる三条西実隆(さんじょうにし さねたか)と、志野流(しのりゅう)の祖とされる志野宗信(しの そうしん、1443〜1523年)が、将軍・足利義政のもとで名香の整理に関わったと伝えられます。いま続いている流派は、御家流と志野流の2つです。
源氏香は、江戸時代の享保(1716〜1736年)のころに考え出されたと説明されています。『源氏物語』が人気だった時代に、物語の巻名を答えに使う組香として生まれました。江戸時代には、香道が大名だけでなく町の人にも広まり、源氏香も流行しました。
本物の源氏香のやり方(遊び方)
- 5種類の香木を、それぞれ5包ずつ、あわせて25包用意します。
- 25包をよく混ぜます。香元(こうもと)という進行役が、その中から好きな5包を取り出して使います。どの香りが出るのか、同じか違うかは、お客さんにはわかりません。
- 5包を1つずつ順番に焚き(たき)、香炉を客から客へまわします。お客さんは、順に香りを「聞き」ます。これを5回くりかえします。
- 聞いた香りをおぼえておき、「この香りとあの香りは同じ」と考えます。
- 紙に縦線を5本、右から順に(一番めの香りが右はし)引きます。同じだと思った香りの線の上のほうを、横線でつなぎます。
- できた図が答えです。52通りの図には、それぞれ『源氏物語』の巻名が付いています。図に合う巻名(たとえば「柏木」)を、記録の紙に書いて出します。
- 正解だと、記録の紙に「玉(ぎょく)」という印が付きます。
このゲームの遊び方
- 1回の遊びは5回の勝負です。1回ごとに、5つの香炉が順番にまわってきます。
- 本物のにおいのかわりに、「音」と「けむりの形」で香りをあらわしました。同じ香りは、いつも同じ音(3〜4音のメロディー)と、同じけむりです。耳をすませて「聞いて」ください。
- 5つ聞き終わると、5本の縦線が出ます。いちばん右が、一番めの香りです。
- 同じ香りだと思う線を、順にタップしてつなぎます。つないだ線をもう一度タップすると外れます。
- 線の下の「聞く」を押すと、その香りをもう一度聞けます。ただし回数に限りがあり、使わなかった分は点数になります。
- 「ていしゅつ」を押すと答え合わせ。あたると、その図と巻名が「香図帖(こうずちょう)」に集まります。52の図を全部あつめるのが、長い目標です。
- かんたんは、けむりの色もヒントです。ふつうは、けむりが同じ色で形だけがちがいます。むずかしいは、音だけをたよりに、似たメロディーも聞きわけます。
知るともっと楽しい豆知識
- 『源氏物語』は全部で54帖(じょう)ありますが、源氏香の図は52こです。いちばん最初の「桐壺(きりつぼ)」と、いちばん最後の「夢浮橋(ゆめのうきはし)」は、図に入っていません。
- 52という数には理由があります。5つの香りから5回えらんで並べる方法は、単純に数えると3125通りです。でも源氏香では、「どの香りか」ではなく「どれとどれが同じか」だけを数えます。すると、ちょうど52通りになります。数学では、この数を「ベル数」と呼び、5つの場合は52です。名前は、数学者エリック・テンプル・ベルが1930年代に論文でとりあげたことにちなみます。
- 図は、5つぜんぶ違う「帚木(ははきぎ)」から、5つぜんぶ同じ「手習(てならい)」まで。第2帖から第53帖の順に、ひとつずつ割り当てられています。
- 図の線は、右から左へ、聞いた順に引きます(いちばん右が1番めの香り)。同じ香りの線の上を、横線でつなぎます。つなぎ方が交わるときは、横線を別々の高さにして、線の長さを調整し、どの線が同じ組かわかるようにします。
- 源氏香の図は、デザインとしても人気です。着物や帯、重箱などの模様、家紋、焼き物、漆器、染めもの、和菓子などに使われています。
- 江戸時代の浮世絵にも、帖の名前をあらわす印として、源氏香の図が描かれました。三代歌川豊国(国貞)の『源氏香の図』や、歌川広重の『江戸むらさき名所源氏』などが知られています。
- 香りを言葉で話すために「五味(ごみ)」があります。辛・甘・酸・鹹(かん=塩からい)・苦の5つで、香りを味にたとえて言いあらわす方法です。このゲームでは、5つの香りに、この5つの名前をつけました。
- 香木は、産地や質で「六国(りっこく)」という6つに分けられます。伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真那賀(まなか)・真南蛮(まなばん)・寸門陀羅(すもんだら)・佐曽羅(さそら)で、なかでも伽羅は、いちばん上等とされてきました。
ゲームにするときに変えたところ
- 本物は香木のにおいを聞きますが、においをお届けすることはできないので、音とけむりの形におきかえました。けむりは、香りを目で見てわかりやすくするための工夫で、ほんとうの香りの感じとはちがいます。
- 本物は一回かぎりの真剣勝負ですが、ゲームでは回数に限りのある「もう一度聞く」ボタンをつけ、はじめての人にもやさしくしました。
- 本物は25包から5包を引くので、同じ種類がいくつ出るかは毎回運しだいです。ゲームでは、むずかしさに合わせて、1回の勝負に入る香りの種類(最大で、かんたん3・ふつう4・むずかしい5)をととのえています。
- 本物は紙と筆で書きますが、ゲームではタップで線をつなぎます。図の線の高さのそろえ方は、横線を別々の高さにして線の長さを調整する、という考え方をもとにしていますが、細かいところは流儀や資料によって少しちがうことがあります。
- 52の図と巻名の組み合わせは、2つの別々の資料の対応表を見くらべて、すべて一致したものを使っています。
見に行く・体験するには
国立国会図書館の電子展示会「源氏物語と源氏絵」では、浮世絵に描かれた源氏香の図についての解説を見ることができます。文化庁の「文化遺産オンライン」には、型紙「源氏香に楓文」など、源氏香の図を使った実物の資料が載っています。香道の体験は、流派(御家流・志野流)の教室や各地の文化施設で行われることがあります。参加する前に、日時や内容は主催者のページで確認しましょう。
用語ミニ辞典
- 香道(こうどう)
- 香木の香りを、きまりにしたがって静かに味わう日本の芸道。
- 聞香(もんこう)
- 香りを「聞く」こと。香炉を手にのせ、心を向けて、じっくり香りを味わう。
- 組香(くみこう)
- いくつかの香りを聞いて、同じか違うかなどを当てる遊び。お題がつく。
- 香木(こうぼく)
- よい香りのする木。沈香(じんこう)の中でも上等なものを伽羅(きゃら)という。
- 銀葉(ぎんよう)
- 雲母(うんも)でできた薄い板。香炉の灰の上におき、その上に香木をのせて温める。
- 源氏香の図
- 縦線5本を横線でつないだ図。52通りあり、『源氏物語』の巻名が付いている。
- 五味(ごみ)
- 香りを辛・甘・酸・鹹・苦の味にたとえて言いあらわす方法。
- 六国(りっこく)
- 香木を産地や質で分けた6つ。伽羅・羅国・真那賀・真南蛮・寸門陀羅・佐曽羅。
- 巻名(まきな)
- 『源氏物語』の各帖の名前。桐壺から夢浮橋まで54ある。
- 玉(ぎょく)
- 正解のしるしとして、記録の紙に書かれる印。
参考にした資料
- ウィキペディア「香の図」
- ウィキペディア「香道」
- コトバンク「香道」(世界大百科事典・日本大百科全書ほか)
- 文化遺産オンライン(文化庁)「型紙 源氏香に楓文」
- 国立国会図書館 電子展示会「源氏物語と源氏絵」(NDLギャラリー)
- 国立新美術館 展覧会情報検索アートコモンズ「源氏香の世界」(京都文化博物館 2008)
- 和泉市久保惣記念美術館 デジタルミュージアム「源氏香の図」(三代歌川豊国)
- 塚田章「源氏香図パターン・ジェネレータの開発」『デザイン理論』85(意匠学会/大阪大学リポジトリ)
- 岩崎陽子「香りと記号:源氏香之図をめぐって」『デザイン理論』49(意匠学会/大阪大学リポジトリ)
- Oran Looney "The Art and Mathematics of Genji-Kō"(52図の巻名対応表・描き方)
- 組子「源氏香」解説ページ(52図と巻名の対応表)
- Liza Dalby「Tale of Murasaki」解説ページ(Genji-kō)
- ウィキペディア「ベル数」
- Wikipedia "Bell number"(名前の由来)
- 兵庫県 淡路「淡路島百景に準ずる景観」資料(枯木神社)
- 三菱電機 Club-ME コラム(香木と香道の歴史)
- 和樂web 記事(聞香のしかたと源氏香)
※ゲームでは遊びやすくするため、本物とちがう所があります。